日日のレントゲン

II

「俺もシェービングクリーム買おうかな」

日用品の棚の前で

栗の実のようにツルリとした小さな子が

細い腕を振り回して

大きな声で独り言

隣りを歩いている母親に聞こえるように

隣りにいる私に、

あるいは棚の向うの誰かに聞こえるように



女の子は

「ブラジャー買おうかな」

と大きな声で言わない

胸のふくらんでこないうちはなおさらだ

笑いをこらえながら

少し悔しくなる

男の性は

サラリと乾いた手触りでユーモアを内に含み

甘えが女に受け入れられることを

前提としている

女は損だな

そんなことを考えている

私の肌ももうそろそろ乾きはじめている

「サラリ」と

なあんだ、だはは、と笑ってやれ

これからは

男達のように

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